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本日のイタリア語

cucu2.exblog.jp

UN POSTO NEL MONDO

直訳すると『世界のある場所』なんだけど、
『世界のここで』と訳した方が、しっくりくるこの本。
今、イタリアで大人気の若手作家FABIO VOLO(ファビオ・ヴォーロ)の
三冊目の本です。

主人公のミケーレにはフェデリーコという中学時代からの大親友がいます。
幼い頃に母親を亡くしたミケーレは、早々と家を出てアパート暮らし(これってイタリアではかなり珍しい)。
フリーランスのライター&編集者です。
フェデリーコは不動産を転がして成功。
それぞれ充実した日々を送っていたはず。

ところが、





三十代がすぐそこに見えてきたある日、
突然フェデリーコは、築いてきた生活を全て投げだし、
旅に出てしまいました。

一人置いてけぼりを食らった形のミケーレは、フェデリーコの持論や気持ちが理解できず、
それでも毎日を続けることで、自分を納得させてきました。
フランチェスカという彼女もできて、それなりに幸せを感じていたある日。
フェデリーコがいなくなって五年後のことです。
フェデリーコが町に帰ってきました。

再会を果たした二人は、かつてのように様々なことを語り合い、
飲み明かし、近場へ旅し、ドライブし、散歩し…
ミケーレは、自分にとってフェデリーコがいかに大切な友人であるかを再認識するのです。

フェデリーコはアフリカのカーポベルデ諸島に自分の足場を築いていました。
信頼できる女性ソフィアと出会い、
二人で古い建物を改修して宿屋を作っているといいます。
そこで使う材料を買うためのイタリア帰国でした。

フェデリーコは、今の生活にとても満足していました。
幸せに満ちあふれていたのです。そんなフェデリーコと過ごすことに、
ミケーレも喜びを感じていたのですが、
再びフェデリーコは旅立ってしまいました。
オートバイで事故に遭い、即死してしまったのです。

ミケーレの悲しみは、言うまでもありません。
喪失感、脱力感、無気力に襲われる毎日。
しかし、ある日、フェデリーコが恋人ソフィアのために作らせた
ネックレスを持って、カーポベルデを訪ねることを決意します。

ソフィアは想像していた通りの女性でした。
そして、驚いたことにお腹の中にはフェデリーコの赤ちゃんがいたのです。
ミケーレは、フェデリーコの代わりに宿の改修作業を手伝い始めます。
ソフィアとも、そしてそこで働く人たちとも友情を育み、
海沿いの町で充実した日々を取り戻します。
もう一度、新たな人生を得たように。

フェデリーコとソフィアの赤ちゃんが誕生して数ヶ月後、
二人は、フェデリーコの両親を訪ねに、イタリアへ。
ミケーレは、イタリアの故郷で、新しい自分と向き合い、新しい生活を始めました。

元恋人のフランチェスカとも、ゆっくりと愛情を取り戻し始めます。
フランチェスカは、「家庭を築くことが夢」と口にしてしまうような
普通の女性だったのですが、でもそれは心の奥の夢を口にするのを恐れてのこと。
フェデリーコに見抜かれ、向き合った夢は、小さくても良いから自分の書店を開くことでした。

自分を見つめ直すために町を離れ、
変わったフェデリーコにミケーレ。
フランチェスカも自分の夢を追い求め始めます。
そして、ひょんなことからその夢が実現。
彼女の生活も一変し、今では書店を経営しているのです。

そして、ミケーレとフランチェスカの間にも赤ちゃんが…
しかし二人は籍は入れずに別居したまま。
これが愛情を保つためのベストの策だと、話し合っての結果です。
二人の赤ちゃんアリーチェも誕生し、
ミケーレはかいがいしくフランチェスカの家に通っては、
アリーチェの世話をし、家事を手伝う日々。
過去のこともすべてを受け入れ、ミケーレは今の自分の幸せをかみしめています。

というのがあらすじ。
イタリアって、とっても保守的な国です。
本当にミケーレとフランチェスカのような夫婦がいたら、
もう周りから、わんやわんや言われるに違いありません。

でも、私はこの二人に、とっても共感しちゃいました。
経済的に許されるならば、こんな結婚生活、理想的かもしれません。
何しろミケーレは、料理好き、そうじもばっちりな豆男なのです。
アリーチェのこともかわいがってくれるし、
産後の疲れをいやすために、フランチェスカを旅に送り出してやるような夫!
いいではないですか。

もちろん、物語の核は、男性間の友情と、自分探し、ということなのですが、
女性の私が読んで、
う〜ん、こんな友情が築けるなんて、やっぱり男はすごい! って思いました。
そうそう、男同士を見ていると、女性同士にはない何かがありますよね。
もちろん、女性の友情も良いものですが。

そして、自分探し。
自分なんて探したって、どこにもいない。
どこに行こうと、それは関係ない。
「この場所」で、やり直すことはできるし、自分を作るのは自分に他ならない。
そんな、メッセージかな。

30歳過ぎても、人生に迷っていた自分を重ねて、
すごく楽しめた一冊でした。
イタリア人を語るのに欠かせない、海、日焼け、サッカー、がきちんとでてくるところも笑えます。
カーポベルデにも行ってみたい!
by arinko-s | 2009-03-27 17:24 | 読書 イタリア語
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