マルコ・ヴェロッキオ監督の作品。
舞台は1978年、ローマ。
アルド・モーロ元首相誘拐暗殺事件という実話を元にした映画です。
ローマのとあるアパートに婚約者と共に入居したキアラ。
実は、ここは「赤い旅団」のアジトの一つで、
誘拐したモーロ元首相をかくまうための部屋として借りられたものだった。
キアラは見張り役の一人として、モーロの様子を盗み見するうちに、
次第に情が移っていく。
「赤い旅団」とイタリア政府との交渉は決裂。
彼らはモーロの殺害を決定する。
キアラは彼を殺すことに反対を示したが、結局幹部の決断を覆すことはできなかった。
しかしキアラは、一人こっそりとアジトを抜け出し自由の身になったモーロ首相を
はっきり感じるのだった。
と、史実にキアラという女性の視点をプラスして仕上げられています。
「赤い旅団」とはイタリアの極左テロリスト集団です。
1970年代から活動を開始し、すでに解散したものと思われていましたが、
1999年にも事件を起こしていることから、まだ組織されていることが知られています。
モーロ元首相暗殺事件のことは、ミラノで暮らしていた時に初めて知りました。
「赤い旅団」のことも、当然何一つ知りませんでした。
その時、解説してくれたカメラマンのフランチェスコは当時50代(きっと今60代)で、
事件のことを熱く語っていたのを覚えています。
彼世代の人たちにとっては、決して風化した事件ではないんですね。
事件の真相はいまだに謎に包まれている部分も少なくないようです。
当時の首相アンドレ・オッティは「赤い旅団」との交渉に
一切応じなかったともいわれていますし、
イタリア共産党の躍進を恐れたアメリカの陰謀説(モーロはイタリア共産党の議会復活を画策していた)もささやかれているようです。
自分たちの政治的主張を通すために人の命を犠牲にするなんていうことは
決して許されることではないし、
そのことについても憤りを感じますが、
それにしても、当時のイタリア政府が本当に一人の命を見殺しにしたのであれば、
そのことに対しては、もっと怒りを覚えます。
イタリア映画祭で見た「運命に逆らったシチリアの女」に続き、
イタリアの暗い歴史を教えてくれる映画でした。