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本日のイタリア語

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Il giorno in piu'

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Fabio Volo の『Un posto nel mondo』がとってもおもしろかったので、もう一冊手を伸ばしてみました。

主人公はジャコモ。35歳。
幼い頃に父親が家を出て行ってしまってから、
母親と二人暮らしで育つ。
神経質すぎる母親の元で、自分の世界に閉じこもるようになり、
大人になってからも誰かと強くつながることに不安を感じている男性です。

ジャコモは毎朝の通勤に使うトラムに乗り合わせている女性に恋をします。
話しかけようとしても、なかなか実行に移せないでいたある日。
その女性ミケーラから声をかけられました。
しかし初めて言葉を交わした彼女から告げられたのは、
翌日、彼女はニューヨークへ引っ越してしまうという事実。

ジャコモは、ミケーラ出発の日、空港へ足を運びましたが、
結局声をかけることができずに帰ってきてしまう。
しかし彼女への思いを断ち切ることができずに、ニューヨークへ後を追いました。
初めてお茶をした時、彼女が持っていた封筒に書かれていたニューヨークオフィスの住所。それだけが頼りでした。

そして、ミケーラと再会。
実はミケーラもトラムで毎朝顔を見る青年ジャコモに好意を抱いていたのです。
もちろん、二人は恋に落ち、ジャコモのニューヨーク滞在中幸せな日々を過ごしました。
それは、ミケーラの発案で、期間限定の恋人という間柄。
終いには期間限定の夫婦として過ごすことを二人は決めたのでした。

しかしイタリア帰国予定日の前日、ジャコモは祖母が倒れたとの知らせを受けます。
ジャコモは一日早く帰国。
二人は心の準備も足りないままに別れてしまいました。

イタリアに戻ってからも、ミケーラと過ごした日々から抜け出せずに過ごしていたジャコモは再びニューヨークへ向かいました。
しかし、ミケーラからの提案は
「もう会わない方が良い。電話も手紙もなし」というもの。
でも、二人はお互いにお互いの子どもを欲しいと思っている。
「この気持ちが3ヶ月後まで変わらなければ、その時パリで会おう」と二人は約束して、再び別れたのでした。
そして、3ヶ月後、ジャコモはそれまでに書きためたミケーラへの手紙を携えてパリへ…。

という物語。
う〜ん、私は『UN POSTO NEL MONDO』の方が好きでした。
ジャコモがトラムで出会ったミケーラに恋心を募らせていく場面は、とっても好きだったけれど。

読みながらすごく感じたのは、
ファビオ・ヴォーロって絶対村上春樹の影響を受けているに違いないということ。
詳細なセックスの話あり、料理の話あり、音楽の話あり。
村上ワールドを彷彿とさせる箇所が何カ所もありました。
でも、村上小説のような不可思議さはなく、もっと平べったい感じがしてなりませんでした。

私はニューヨークには行ったことがありませんが、ニューヨーク好きにはある種のガイドブックみたいで、それも楽しめるかもしれません。
表紙に見えるのは“DOMA Cafe”の文字をウインドウの内側から写したところ。
AMOと逆さに写っていますが、これはイタリア語の「愛している」の一人称単数系です。
これを見て、ファビオ・ヴォーロはこの話を思いついたのかもしれません。

一つだけ、すごく気に入った表現。
ニューヨークのホテルで、ミケーラと別れた後にメールを打っていたジャコモの元に、ミケーラからのメールが届きます。
それを読んだジャコモは
Mi ha rubato le parole dalle dita. と語ります。
彼女はぼくの指から言葉を奪った、というのが直訳。
指で紡ぎ出していた言葉をもう送る必要はない、っていう感じでしょうか。
携帯メールがなんだかとっても詩的に思える一文でした。
by arinko-s | 2009-06-30 17:08 | 読書 イタリア語
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