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本日のイタリア語

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DUE DI DUE

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イタリアの青春小説の定番、Andrea De Carlo の一冊です。
初版は20年前の1989年だそうです。

マリオとグイード、二人(due)が中学生の時に出会い、高校時代を共に過ごし、卒業後は疎遠になったり再会したりを繰り返しながら、それぞれに年を重ねて行く、という物語でした。
マリオの語りで話は進みます。

二人に共通しているのは、二人とも世間を斜に構えて見ていること。
周囲に馴染めず、媚びて同調することもなく、自分の置かれた境遇を呪っている。
二人はミラノの出身。時は1960年代半ば。
世界中で学生運動が激しくなっていた時代です。
もちろん、ミラノも他の学生街と違わず、運動はどんどん過激化して行きます。
教師たちの通り一遍の授業にうんざりしていた二人も、
運動に参加し始めました。
どこかのセクトに属するのではなく、
あちこちの集会に顔を出す二人。
でも中には表面だけのセクト、
あるいは方向性が歪んで行くセクトもあるわけで、
そんな裏側を見るうちに二人の熱意も他のことに向いて行く。
そして、学生運動自体も急速に冷めて行ってしまうのです。

グイードは繊細で、それでいて破壊的。
誰もが彼の発する言葉に惹き付けられます。
マリオが好きになる女の子たちも、みなグイードに吸い寄せられてしまうのです。
でもグイードの魅力を認めているマリオは納得してしまう。

マリオは大学時代の友人に勧められるまま、一時はドラッグに手を染め、ボロボロになっていきますが、
義父が残してくれた遺産で、ウンブリア州の田舎に打ち捨てられていた古い2軒の家“Due Case”と土地を買い、
そこで自給自足の生活を始めました。
そしてマルティーナという女性と出会い、二人は生涯ともに生きて行くことを決める。
女の子と男の子の双子にも恵まれました。
12ヘクタールもの土地を月日をかけて耕し、苦労の末、有機農法で育てたブドウ、小麦、様々な果物を収穫するようになりました。
それらを加工し商売としても成り立ち始めます。

地に足をつけた生活を送るマリオに対し、世界中を放浪し続けるグイード。
しかしどこで生活をしていても、自分が求めていた土地ではない、生活ではない、とまた新天地を求めるグイード。
結局疲れ果ててイタリアに戻ってきたグイードを、マリオはDue Caseに迎え入れる。
グイードは次第に活力を取り戻し、一冊の本を書きました。
ミラノと工業化した社会に対する批判を書いたこの本が、ある書評をきっかけに爆発的に売れ始める。
グイードもやっと自分の居場所を見つけたかと思えましたが、
結局グイードはプレッシャーに押しつぶされ、アルコールに溺れるようになってしまうのでした。

ざっくりとした粗筋は、こんな感じです。
時間がなくて、なかなか読み進めることができず、読破するのにたっぷり時間がかかってしまいましたが、
読み終える時、泣きました。
イタリア語の小説で泣いたのは初めてかも知れません。
読み終えるのがもったいなかったのと、
結末の衝撃に涙、涙でした。

良く、男性の友情と女性の友情って比較されますよね。
人にもよるのだと思うけれど、グイードとマリオの絆の深さは私には計り知れません。
脱帽です。
私だったら、「お前いいかげんにしろよ」とグイードの放浪癖にさじを投げてしまいそうだけれど、
マリオはいつまでもグイードを深く愛している。
何度もグイードの行動や言葉に傷つけられ、疎遠になるけれど、
頼られると喜んでもてなすし、
グイードを非難する人から、彼をかばい続けるのです。

実のところ、私もグイードタイプではないかと思ったりもします。
夢は大きいけれど、いつもプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、
そして不満もたくさんあったり、だけどそれに対してどうして良いかわからず一人爆発しそうになったり。
グイードは大都会のミラノを憎んでミラノから逃げ出したはずなのに、結局ミラノに戻ってしまう。
田舎で自分の居場所を見つけ、地道に人生を切り開いていったマリオがうらやましかったのだろうな、と思います。
私も、自分でできるかどうかは別にして、そんなふうに一歩ずつ人生を開拓している人がまぶしく思えます。

タイトルのDUE DI DUEは直訳すると二つの二つ。
どういう意味かなあ? って思っていました。
読み終わった今は、二人の二つの物語、を指しているのだと思います。
イタリアの学生運動の熱気、若者の倦怠感、閉鎖的な田舎、あらゆることが見えてくる一冊。
なんで翻訳されていないんだろう?って不思議です。
by arinko-s | 2009-08-22 11:55 | 読書 イタリア語
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