パヴェーゼの『丘の上の家』の講読クラス。
ずっと更新していませんでしたが、長い夏休みを終え、前期の授業が三回。
それも終了し、昨日後期が始まりました。
一度は終戦を迎えたと思ったものの、再び戦況が悪化。
トリノの町もコッラード先生が暮らす丘の上も空襲を受けます。
シチリアには連合軍が上陸し、シチリア市民は解放されています。
その状況は、トリノの人たちもコッラード先生もラジオで知っている。
そしてトリノの人たちは、もっとトリノに近いローマかジェノヴァに連合軍が上陸してくれることを願っています。すでにドイツ軍が自分たちを守ってくれるわけではないと理解して。
そんな日々の中、コッラード先生はかつての恋人、カーテの一人息子、ディーノが自分の息子ではないかと、疑いを募らせていきます。
しかしカーテに訊ねてもまったく相手にされず。「だったら何よ」って感じです。
真実は未だ闇の中。
でもコッラード先生は確信にも近い直感でディーノをかわいがっています。
とそんなところまで話が進みました。
先日、コッラード先生の下宿先のおばあさんが、一人娘エルヴィーラと先生をくっつけようとして、2人をからかうシーンがありました。
おばあさんの冗談にコッラード先生が一言
「ci mancherebbe anche questo」(チ マンケレッベ アンケ クエスト)と答えるシーンがありました。
ci mancherebbe で「うんざりだ」「とんでもない」「そんなことあるもんか」「まったく」という意味があるそうで、
この場合、コッラード先生は他にもうんざりしていることがあって、「これにも(アンケ クエスト)うんざりだ」と答えているわけです。
村上春樹の小説の「やれやれ」という台詞が、まさにこの「ci mancherebbe!」ではないですか。
なんだかコッラード先生が村上小説の「ぼく」に思えた箇所でした。
「ふ〜、やれやれ」ってね。
逆にイタリア語版村上小説のこの台詞は「ci mancherebbe」と訳されているのか、
ちょっと調べてみたくなりました。