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本日のイタリア語

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ビアンカ・ピッツォルノと、イタリアの小学校の先生の話

初の翻訳童話は、イタリアを代表する現代児童文学作家のひとり、ビアンカ・ピッツォルノのお話です。
その著作数は、とても多く、イタリアでは40冊を超えているそうです。
既に日本語に翻訳されているものも、何冊かあります。

まずこの企画は、ピッツォルノの著作を、何冊も読むことから始まりました。
「こんな膨大な著書があるのだからこそ、一番ピッツォルノらしいものを」というアドバイスがあったのです。

一番の代表作を、というのならば話は早い。
でも、そうはいかないのが世の中の常。
この『赤ちゃんは魔女』は、小学校低学年から中学年向きの読み物で、原書は100ページほどでしたが、ピッツォルノの著作はどれも長い!
長いお話は、日本の出版社には敬遠されがちです。

どうも、イタリアの児童書の世界と、日本の児童書の世界を比べてみると、日本の子どもの読書力の方が、劣るような気がしてきます。
日本では、中学年で100〜150ページ、高学年で150〜250ページ、というのがだいたいの目安でしょうか?
ちなみに我が子の本棚(かなりの読書好き)を調べたところ、300ページを超す本は、全集のような、数冊の著作を一冊にまとめた本以外にはありませんでした。
ところが、イタリアでは、300ページを超す児童書はざら。
500ページ近い児童書も少なくありません。

日本でも、ハリーポッターブームから、分厚いファンタジーも次々と出されていますが、よほどのアピールポイント(映画化が決まっているとか)がない限り、ページ数の多い児童書の企画を通すのは、とても難しいことのようです。

ピッツォルノに話を戻すと、わたしのリサーチでは 
『Ascolta il mio cuore』(『この心臓のドキドキを聞いて』)が、彼女の一番の代表作だと感じています。
(もちろん『赤ちゃんは魔女』も代表作の一冊であることに、間違いありません!)
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舞台は、戦後の貧しい時代のイタリア。
主人公のプリスカとふたりの友だちを中心に、小学校生活のあれこれが描かれています。
この3人は裕福な家庭の子どもたちなのですが、まだ貧富の差が激しいこの時代。
プリスカのクラスにも、弟や妹の世話で学校に来られない子や、おふろに何日も入っていない子たちがいます。
すると、先生が堂々と、そういった家庭の子どもを差別するのです。
そんな不公平に対して、プリスカは、すぐに心臓がバクバク、ドキドキ。
先生とだって、クラスのいじめっ子とだって、堂々と、そして悪知恵を働かせて戦います。

という内容。
時代や国が違っても、学校では同じようなことが行われているし、素直でけなげな少女たちに共感できる物語です。
イタリアの子どもを巡る日常も、たっぷり描かれていて、そこも魅力です。

わたしの手持ちの版は、317ページ。それもかなり級数の小さな文字でびっしりと組んであります。
これをゆとりのある組み方に替えて、日本語に訳すと、やはり500ページ近くになりそうです。
これは、内容がどんなにおもしろくても、喜んで受け入れてくれる出版社は、少ないかも。
翻訳に結びつけるのは、かなりハードルが高そうです(もちろん、あきらめてはいません)。

ピッツォルノの書く物語には、空を飛べる人がたくさん出てきます。
ということを『赤ちゃんは魔女』のあとがきに書いたのですが、
実は、いじわるな学校の先生もたくさん出てきます。
ピッツォルノ自身、学校で先生にいじめられたのかも、なんて思うほど。

そうそう、先日感想を書いた映画『シチリア シチリア!』にも、
先生が生徒たちに父親の職業を聞き、裕福度をカテゴライズする場面がありました。
監督のトルナトーレは、「50年代のイタリアの小学校にはよくあったこと」と話しています。
ピッツォルノの描く先生たちも、この映画に出てくる先生と同じ。親の職業によってえこひいきするような先生なのです。

ちなみに、現在のイタリアの小学校には女の先生しかいません。
もちろん例外はあるでしょうが、90%以上、女性です。
理由は給与が安くて、家族を養えない、ということのようです。
この事実にも驚きますが、イタリアの小学校には、胸の谷間をぐいぐい見せつけるような先生も少なくなく、そのことにも驚いちゃいます。
日本だったら、親からの抗議殺到かも。

(追記)
よくよく考えてみたら、岩波児童文庫は、どれもページ数が多いんですね。
いま、我が子が夢中になっている『ドリトル先生』シリーズも、どれも400ページ近い厚さ。
しかも、ものすごく小さな文字でびっしり。
内容が濃ければ、厚くても子どもは喜んで読む、ということ、ですね。
逆にいえば、そのくらい内容の濃い本を探せ、ということか。
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by arinko-s | 2010-10-20 16:37 | 翻訳
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