著者は、ドメニカ・ルチャーニ、題名は『7回生きたねこ』。
主人公は、黒ネコ。
最初の人生は、ナイル流域。黒ネコは人々から、聖なる命とあがめられていました。
ある時、黒ネコはナイル川に映った自分の姿を見て驚きます。
水に映っていたのは、真っ黒な姿。しかし、黒ひげの中に、一本だけ真っ白に輝くひげが生えていました。それは、まるで夜の空に輝く月の光線のよう。
黒ネコは、自分のことを「月ひげ」と呼ぶようになり、以降の人生でもこの白いひげを大切にし続けます。
黒ネコの4人めの飼い主は、恋する女の子。
しかし、彼女は父親の強い反対にあい、自殺してしまいます。
道連れにしたのは、ペットの黒ネコ。
黒ネコは飼い主に毒を飲まされ、死んでしまいました。
次に、黒ネコが目をさますと、それは母親の胸元でした。兄弟と一緒に、暖かなミルクを飲んでいたのです。
そう、黒ネコは2度目の人生を生きはじめたのです。
それは、エトルリア時代の海に囲まれた土地。
またしても黒ネコは、幾人かの主人に飼われ、そして最後はこの土地に攻め込んできたローマ人に殺されてしまいました。
次に、黒ネコは寒さで目をさましました。
それは、中世ドイツの森の中…
という具合に、人生をくり返した黒ネコ。
ロシア革命時のロシア、産業革命後のイギリス、第二次世界大戦時のフランス、そして現代のニューヨーク。
7度目の人生では、キャットフードのCM出演にかり出され、そこで出会ったメス猫と恋に落ちて、物語は終わります。
これは……
日本のロングベストセラー絵本『100万回生きたねこ』と、ねこが生きた回数は違えども、あらすじはまったくいっしょではないですか!
もちろん、こちらの『7回生きたねこ』は、物語が主人公の黒ネコの視点で語られるのに対し、『100万回』のほうは、第3者の語り口で物語が進んだり、
あるいは、『7回』のほうは、それぞれの人生の時代設定がかなり具体的だったりと、大きく異なる点も少なくありません。
でも、ねこが人生をくり返し、最後に愛するパートナーを見つけるという点はそっくり。
人生の終え方が、ちょっと残酷なところも同じです。
『100万回』のほうは絵本ですから、ひとつひとつの人生が、さらっと終わるし、もちろん100万回分の人生を語っているわけではありません。
それに対し『7回』のほうは、ひとつひとつの人生についてのエピソードがそれぞれ長く、黒ネコの目で見た人間界がおもしろおかしく描かれていて、ゲラゲラ笑ってしまう箇所も多々ありました。
それにしても、こんなふうに遠く離れた土地で同じような物語が生まれるなんて、すごい偶然。
もちろん、『7回』の著者ドメニカ・ルチャーニが『100万回』の英訳か仏訳かを読んでインスピレーションを得たと考えるほうが自然なのかもしれませんが、でもそうではなく、本当にたまたま同じような物語が両方の国で愛されていると思いたい。
ちなみに『7回』のほうは、二年に一度、優れた児童文学に贈られる「ピッピ賞」を2000年に受賞しています。