イタリア語の授業で、Paolo Virzi(パオロ・ヴィルツィ)監督の映画を見たので(その映画については、また改めて書くつもり)、
見逃していたヴィルツィの映画を見てみました。
舞台は1814年、フランス帝国を追放されたナポレオンが、トスカーナ州のエルバ島に送られてきます。
かねがねナポレオンを忌み嫌っていた、島の文学青年、マルティーノ。
英雄到来にざわめく子どもたちに、自分の主義主張をおしつけたと、小学校教師の職を追われてしまいました。
けれどもタイミング良く、ナポレオンの司書兼記録係として、市長の推薦を受け、マルティーノが採用されます。
マルティーノは、これこそ運命と信じます。
ナポレオンを暗殺する機会を、見計らうようになるのです。
けれども、戦いに疲れ、肉体の限界や老いを自分のなかに感じ始めているナポレオンは、想像していたよりもずっと人間味にあふれた人物でした。
マルティーノは次第に、そんなナポレオンに親近感を覚えるようになります。
またマルティーノは、ナポリの老貴族の妻であるエミリアがエルバ島へやってくるたびに、情事を重ねています。
けれどもある日、エミリアはマルティーノに別れを告げます。
エルバ島の屋敷は売ることになり、二度とエルバ島へは来ないと。
ときを同じくして、マルティーノの恩師であり、反ナポレオン主義を唱えていたフォンタネッリが、ナポレオンの屋敷に武器を持って押し入ります。
あえなく逮捕されたフォンタネッリは、処刑されてしまいました。
ナポレオンはマルティーノに「もう流血はたくさんだ。彼に罰を与える気はない」と約束していました。
裏切られたと感じたマルティーノは、恩師の遺志を継ぎ自分の手でナポレオンの暗殺を実行することを決意。
寝ているナポレオンを襲います。
しかし、時既に遅し。
ナポレオンはエミリアを愛人として従え、エルバ島を脱出していたのでした。
というのが、あらすじ。
ナポレオン役のダニエル・オートゥイユ、どこかで見たことがある、と思いながら観ていましたが、
『画家と庭師とカンパーニュ』の画家役の役者さんでした!
この映画では、見事に弱々しくなったナポレオンを演じています。
確か、歴史の教科書では、「ナポレオンはエルバ島に流刑された」と書かれていたような記憶があるのですが…… 。
勝手に、ナポレオンはとても惨めな生活を送らされていたものと、思い込んでいました。
でも実際は、「年額補助200万フラン。皇帝の称号を保持し、400人の近衛兵を保有する」という緩やかな条件の下での島流しだったのですね。まったく知りませんでした。
トスカーナ州の観光サイトによれば、エルバ島でのナポレオンは、道路を整備し、行政を取り締まり、島民の健康や精神にまで気を配り、島を去るまでの9ヶ月間、島民との間に深い絆を築いたそうです。
今でも島のミゼルコルディア教会では、毎年5月5日(ナポレオンの命日)に、ナポレオンの島での業績を称えるミサを行うそうです。
個人的には、とても楽しめた一本でした。
ただし、最後のシーンは???
マルティーノは、マエストロの墓前に、ナポレオンを暗殺しようと持ち歩いていた懐かしのピストルを埋めます。
そして一度は帰ろうとしたものの、突然墓前に戻ってきて、土を掘り起こしピストルを手にするとほほえみます。
そして流れるテロップ。
「やはり暗殺計画を実行しようとしてセント=ヘレナ島へ向かったマルティーノ。しかし、セント=ヘレナにたどり着くのが遅すぎた。それは1821年5月6日のことだった」
つまり、ナポレオンは5月5日に亡くなっているので、間に合わなかった、ということなのですが、このシーンはいるのかなあ。
いや、それより疑問なのは、邦題!!
調べてみたら、「ナポレオンの愛人」と題され(そうそう、原題を直訳すると「N ぼくとナポレオン」です)、
こんな、カバーに変えられていました。
そりゃ、エミリア役のモニカ・ベルッチは、最後にナポレオンの愛人になって一緒にエルバ島を脱出するけれども、
映画の主題とタイトルがあまりにもかけ離れています。
日本でも名が知られているモニカ・ベルッチの名を借りて売ろうとした商売根性が見え見えで、それが逆に商業的に成功しなかった原因だとしか思えません。
このタイトルと、ジャケットにだまされず、皆さん、ぜひ見てみてください(ネタばらしちゃったけど)!
わたしは、原作の小説、エルネスト・フェッレーロの「N」を読んでみたいと思います。
そして、次回イタリア旅行は、エルバ島を目指します(いつ実現するかまったく未定ではありますが)!