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本日のイタリア語

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Settanta acrilico trenta lana

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タイトルを直訳すると、『アクリル70% ウール30%』。

両親とLeeds(イギリス北部の町)で暮らす、大学生のアメリア。
一人暮らしを始めようとした矢先、父親が交通事故で亡くなってしまいます。
車に一緒に乗っていたのは父の愛人。
ショックを受けた母親は、その日から口がきけなくなってしまいました。

アメリアはひとり暮らしをあきらめ、大学もあきらめ、母のめんどうをみることを余儀なくされます。
母親のリヴィアは、夫の死以来、すべてに無頓着になり、毎日家にこもって外に出ません。
爪は汚れ、髪の毛は油でぺったり。
そして、いつでもポラロイドカメラを首からぶら下げ、ありとあらゆる穴を撮るようになります。
車ごと穴に落ちた夫の死のトラウマです。
カメリアはそんな母親にうんざりしながらも、生活費を稼ぐために、イタリアの電機メーカーの洗濯機のマニュアルを、英語に翻訳する仕事を始めます。

そんなある日、カメリアは中国人の青年、ウェンと知り合います。
元々大学で中国語を習っていたカメリア。ウェンにお願いし、中国語の勉強を再開しました。
いつしかカメリアは、漢字を覚えることに夢中になり、ウェンの母親のお古の筆を使って次々と漢字を紙に書き、イデオグラムの世界に没頭するようになっていきます。

もちろん、カメリアの気持ちを癒したのは漢字だけでなく、ウェン自身でした。
けれどもウェンはとても消極的で、カメリアは振り向いてもらえないことに憤りを覚え始めます。
そして、ウェンの弟と肉体関係を持ってしまうのです。

そして、すべてはウェンの知るところになり、愛する人も失ってしまったカメリア。
その一方で母親のリヴィアは、カメリアに無理やり行かされた写真講座で、やはり妻に先立たれた写真の先生とおつきあいを始め、みるみるうちに精神状態を回復させて行きます。

幸せそうな母親と恋人を見て、嫉妬するカメリア。
高い塀に上り自殺をしようと考えるのですが、それを止めようとした母親の恋人を逆に突き落とし……。

というなんとも暗いストーリー。
著者のViola Di Grado(ヴィオラ・ディ・グラード)は、弱冠23歳。
このデビュー作が話題になり、今年度の文学賞に軒並みノミネートされています。

漢字と中国人の青年、それから古い服をあれこれリメイク(この服の袖とあの服の身頃にこっちのポケットを合体させるとか)すること、そして洗濯機のマニュアル、とすごくおもしろいキーワードがたくさんでてくるのだけれど、なにしろテーマが重たい。
おまけに舞台が、暗い暗い冬のリーズ。
ひたすら一本調子で進むので、途中までのハラハラ感もなくなってきて、ひたすら残りのページをカウントしながら読みました。

著者の23歳という年齢も手伝ってか、書店のレビュー欄も喧々ガクガク。
たしかにものすごい才能を持った書き手が現れたことには変わりないのだろうけれど、好きか嫌いかは、別れるところだろうなあ。

最後、母親の恋人が地面で頭から血を流しているのを置き去りにして家に帰ったカメリアの台詞。
「Stai tranquilla mamma, tornera' tutto come prima. Siamo di nuovo solo noi. Per sempre. Come ti avevo promess. ママ安心してね、全部元通り。またわたしたちだけの生活に戻るの。これから、ずっと。約束したものね」

きゃ〜〜〜、って悲鳴あげそうになりました。
自分の殻に閉じこもる母親にうんざりしていたくせに、いざ母親に恋人ができるとこの始末。
ウェンに大人になるレッスンもしてもらえば良かったのにね。
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by arinko-s | 2011-06-18 18:24 | 読書 イタリア語
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