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本日のイタリア語

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イタリアの自然放射線

先日『Mr.サンデー』で取りあげられた、イタリアの自然放射線について書いたところ、あまりにも一気にアクセス数が増え、びびって思わず記事を削除してしまいました。
でもやっぱり、自分の言葉で書いておきたいと思い、もう一度書くことにします。

番組の内容は、ディレクターの方がイタリアとブラジルに行き、それぞれ自然放射線量を測定するというもの。それを首都圏のホットスポットと比較するとどうなのか、ということでした。

わたしは、イタリアとこんなに長く付き合っているにも関わらず、イタリアの自然放射線量が他と比べて高いということを、まったく知りませんでした。
イタリア、特に中部イタリアは、その地質の関係で自然放射線量がとても高いそうです。
花崗岩や大理石といった石の中に放射線が含まれているんですね。
イタリアはこういう石の産地であるだけでなく、古い建造物には必ずといっていいほど、こういう石が建材として使われているので、とにかく町の中どこを歩いていても、放射線量が高いというわけです。

取材地はローマでした。
番組ディレクターは、観光客なら必ず訪れる場所、コロッセオ、真実の口、スペイン広場、トレヴィの泉、そして街中の公園や中学校前で放射線量を測定していました。
これが驚くほど高い!
0.3マイクロシーベルト/hは、ざら。高いスポットでは0.4マイクロシーベルト/hを超えていました。

番組ディレクターは、そういった線量計の数値を、通りを行くイタリア人に見せては
「日本の首都圏のホットスポットと呼ばれる地域よりも高い数字ですが、いかがですか? 不安はないですか?」という質問をしていました。

でも、そんなこと聞かれたって、イタリア人、とくにローマの人たちは答えようがないというもの。自分が生まれた街、今暮らしている街の放射線量が高いからと聞いて、すぐにパニックになる人がいるでしょうか?
「ここで暮らしていくしかない」「気にしていたら暮らしていけない」と答えるに決まっています。

一番の疑問は、自然放射線と、今日本で問題になっている人工放射線を、線量だけで単純に比較してもいいのか、ということでした。
番組の中で首都大学の福士政広さんという専門家が、「自然放射線も人工放射線も、そのリスクは同じ」ときっぱり断言していました。

調べてみると、その通り。放射線(α線、β線、γ線)に、自然も人工も違いはありません。
でも大切なことは、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90、といった自然界に存在しない人工放射能は、体内に濃縮・蓄積するということ。
それに比べ、自然放射能は体内に濃縮・蓄積しないそうです。
(わかりやすく京都大学の市川定夫さんが教えてくれています→

専門家ならば、きっとご存知なはずです。どうして、この大切な部分を述べなかったのでしょうか?
それとも、特集意図からはずれる言葉としてカットされていたのでしょうか?

番組中、インタビューされているイタリア人の発言についても、たくさんの人が不快に思っているのを読みました。
わたしが発言したわけではなく日本語にしただけなのですが、なんだかとっても申し訳ない気分になっています。
でも、あのイタリア人たちも、肝心なことは知らなかったのです、きっと。
それから、流山市からきた観光客の女性が「ローマと同じなら、なんだかホッとするわ」と話されていたことにも、胸が痛みます。
同じじゃないんです! 

報道番組が報道しなければならないことって、肝心なことを省いて意味のない安心感をばらまくことじゃないはず。
なんだかあの放送以来、わたしも安全アピールに加担してしまったような気がして、胸のつかえがとれません。
by arinko-s | 2011-08-04 11:28 | 日々思うこと
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