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本日のイタリア語

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L'uomo che verrà やがて来る者

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2009年のローマ国際映画祭で審査員賞と観客賞を受賞した映画です。
監督はGiorgio Diritti(ジョルジョ・ディリッティ)。
ボローニャ近郊の村で起こったナチスによる虐殺を、主人公の8歳の少女、マルティーナの目を通して描いています。

題材となっているのは「マルツァボットの虐殺」という、実際に起こったできごとだそうです。
1944年9月29日から10月5日にかけて、マルツァボット村というエミリア・ロマーニャ州の、人口7千人弱の小さな村で起こったこの事件。
連合軍がシチリア島に上陸し、ムッソリーニが逮捕された後のこと。
ドイツ軍がイタリア半島を占領し、その一方でパルチザン蜂起が活発になり……。
連合軍が徐々に北上し各都市を解放していくものの、ドイツ軍は抵抗を続けていた、そのころのできごとです。

映画の中でも、ナチスは村人たちに容赦なく銃を向けます。
子どもにも、女性にも、老人にも。
教会に逃げ込み、必死で祈りを捧げる村人たちも撃たれます。
神父も撃たれます。
実際、この虐殺で771人(内216人が子ども)の村人と7人のパルチザン兵が亡くなったそうです。

映画のなか、マルティーナは奇跡的に生き残ります。
周りにいた人たちの血で服はどす黒く染まり、あごや腕に傷を作りながらも、マルティーナはひとり虐殺の場となった建物を逃げ出しました。
生まれたばかりの弟を助けに走ったのです。

実は、この弟の前に生まれた弟が生後すぐに亡くなってしまってから、マルティーナは口をきかなくなってしまいます。
そのマルティーナが、小さな弟をかごに入れ、あやしながら子守唄を歌ってあげるシーンで、映画は終わります。
こんな悲しすぎるできごとで、声を取り戻したマルティーナに涙涙。

このマルティーナを演じた少女、Greta Zuccheri Montanari(グレタ・ズッケリ・モンタナーリ、写真の女の子)ちゃんのかわいいこと、かわいいこと。
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じっと見つめる鋭い視線。どんなことでもお見通しだと思わせる視線です。

Ogni tanto vengono i soldati tedeschi, e io non so perché sono venuti fino a qui e non sono rimasti a casa loro con i loro bambini.
E poi ci sono ribelli che rifanno la guerra, perché dicono che se ne devono andare.
Eccola cosa che ho capito che molti vogliono ammazzare qualcuno altro.
Ma non capisco perché.

時々、ドイツ兵がやってきます。どうして彼らがこんなところまでくるのか、どうして自分の子どもたちと家で過ごさないのか、私にはわかりません。
それから、再び戦争をしようとしている反乱軍の人たち(パルチザン)がいます。戦わなくてはならない、と彼らは言います。
私にわかったことは、多くの人たちが誰か別の人を殺したがっているということです。
どうしてかはわかりません。

これはマルティーナの書いた作文です。
マルティーナは、何もかも理解していたような気がします。

タイトルの L'uomo che verrà を直訳すると「やってくるだろう人」ということですが、この「人」が誰を指しているのか、はっきりとは描かれていません。
でも、わたしはナチスのことだと思いました。

物語の中、農民たち数家族が肩を寄せあって暮らすマルティーナの家に、お腹をすかせたドイツ兵たちがやってきます。
マルティーナの家族は卵や鶏をわけてやり、ドイツ兵たちは食事をし談笑して去っていきます。
でもこの時きっと、マルティーナは、後々ナチスたちがその形相を変えてやってくることを予感していたような気がしてなりません。
このタイトルはマルティーナの言葉のように思えるのです。

もちろん解釈は人それぞれ。
こんなことがあっても、あと少しで連合軍の人がやってくる、ということかもしれません。


とにもかくにも、マルティーナと弟が手をとりあって強く生きていってくれますように、と祈らずにはいられない映画でした。

(追記)
ひとつ大切なことを書き忘れていました。
この映画、ストーリーはとても悲しいものですが、とにかく映像が美しい!
まったく知りませんでしたが、昨日(10/23)から岩波ホールで上映が始まったそう。
重たいテーマですが、あの素晴しい景色は見てほしいなあ。
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by arinko-s | 2011-10-19 21:48 | 映画 イタリア
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