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本日のイタリア語

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TUTTA LA VITA DAVANTI 見わたすかぎり人生

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ローマ大学哲学科を最優秀の成績で卒業したマルタ。
そのまま大学に残れるかと思いきや、ポストの空きはなく職探しに奔走することになります。
何社からも断られ続け、やっと雇ってくれたのは母親と二人暮らしの子どもラーラでした。
つまり、住み込みのベビーシッター。
ラーラの母親ソニアは、コールセンターのパートタイムの仕事も紹介してくれました。

さっそくベビーシッター件テレホンオペレーターとして働きはじめたマルタ。
電話して売り込むのは、本当に効果があるのかどうかわからない浄水器。これだけでも憂鬱になろうかというものなのに、朝は女性上司からの叱咤激励メールで起こされ、会社につけばついたで、全員揃って奇妙な歌をうたいながら踊らされる。休憩時間もトイレの時間も制限され、毎日仕事終わりには、その日のアポイント件数を発表されお尻を叩かれる。
会社の異様なハイテンションぶりに、マルタは今ひとつついていけずにいます。
しかし、そこは優等生のマルタ。仕事にも遺憾なく才能を発揮し、みるみるうちにトップオペレーターに上りつめます。

そんなある日、非正規雇用者の労働組合を作った組合活動員クラウディオと出会います。
営業成績の悪い社員にはくだらない罰が与えられることや、半ば脅迫めいた台詞で訪問販売のアポイントを取らせられることなど、マルタはクラウディオに告発します。
このことが引き金となり、会社は大変な事態に……。

これが大まかなあらすじ。
最初から最後まで、驚きと笑いの連続でした。
でもよくよく考えれば、とても悲しい話なんです。
たとえ大学を優秀な成績で卒業しても正社員の仕事を見つけるのは至難の業。よく聞く話ではありますが、それがイタリアの現実。今や、迷わず外国で職を探す大学卒業生も少なくないといいます。
でもこんなばかげた仕事でも無いよりはまし。
その気持ちも、わからなくはありません。

悲しいため息が出てしまうストーリーなのですが、きちんと救いが残されています。
マルタが初めて見る世界、初めて接するタイプの女の子たち。
彼女はテレフォンオペレーターの仕事と、同僚の彼女たちが夢中になっているテレビ番組をハイデッガーの哲学と結びつけて、こつこつと論文を書いていきます。
この論文がイギリスの学術誌に認められ、掲載されることに!
一歩明るい未来に近づいたことを予感させる結末です。

いやさらに、最後の最後があります。
ベビーシッターのお相手ラーラが、将来の夢を聞かれ「哲学者になるわ」と答えて映画は終わるのですが、これも嬉しいエピソードです。
マルタが子どもにもわかるように哲学者と哲学の話をくり返し聞かせていた結果、哲学の何とやらばかりか、そのおもしろさがほんの5歳くらいの女の子に伝わったということ!
マルタは嬉しくてたまらなかったに違いありません。

イタリアの映画評サイト『My movies』のなかにこう書かれていました。
「(前略)トスカーナ出身のヴィルツィ監督は、悲喜劇的かつグロテスクなブラックコメディーの側面を強調しながら、ぞっとするような、大人の生き生きとしたミュージカル仕立ての作品に仕上げている。モニチェッリのほろ苦い喜劇の素晴しき伝統を再評価した作品といえるだろう(後略)」
モニチェッリがイタリア映画に残した軌跡は、今も脈々と受け継がれているのですね。

マルタを演じているのはIsabella Ragonese(イザベッラ・ラゴネーゼ)。
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今期待の若手女優のひとりだそうです。
とってもかわいいのですが、いつも上の写真のような格好(ミニのワンピースにショートブーツ)で、思いきりがに股に歩いている!
これも生真面目な女の子という設定の、演出のひとつ?
次に出会う時には(もちろん映画の中で)、もっと美しい歩き方をしていますように。

監督はPaolo Virzi(パオロ・ヴィルツィ)。
La prima cosa bellaNCaterina va in cittàも良かったけれど、この映画も負けず劣らず気に入りました。

ただひとつ邦題の「見わたすかぎり」が、どうも気に入らない。
原題のdavantiは「前に」です。
Caterina va in cittàの中の、カテリーナの台詞にもあったように
ヴィルツィ監督のメッセージは「前を、前に」ということだと思うのです(カテリーナの台詞はavantiが使われています。これはdavantiと同様の副詞「前へ、前に」の意味)。
つまり「人生はまだまだ前に続いている」「人生これからさ」という意味だと思うのです。
「見わたす」を広辞苑で引いてみると「遠く広く望み見る」とあります。わたしのイメージでは、周囲全体という感じ。
そりゃあ、後ろにも今まで歩んできた人生はあるんだけどね。
いやいや、もっと前だけを強調してほしかったなあ。
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by arinko-s | 2011-11-24 18:19 | 映画 イタリア
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