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本日のイタリア語

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Un tè con Mussolini ムッソリーニとお茶を

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アメリカ映画と知らずにイタリア語で鑑賞。
監督は『ロミオとジュリエット』(1969)、『チャンプ』(1979)で知られるフランコ・ゼッフィレッリ。
1999年の映画です。

舞台は戦時色が濃くなりつつあるフィレンツェ。
イギリスから生地を輸入している会社で働くイギリス人女性メアリーは、雇い主から突然息子ルカの世話を頼まれます。
ルカの母親は病気で既に他界。父親は、愛人に生ませたこの子どもルカを孤児院に預けていたのです。

フィレンツェに魅せられフィレンツェに暮らす友人たちに協力を求め、メアリーはルカを育てる決心をしました。

故イタリア大使の未亡人レディ・へスター。
イタリア美術をこよなく愛するアラベラ。
この2人はメアリーと同じくイギリス人です。
そしてアメリカ人の考古学者ジョージー。
玉の輿にのって芸術作品を買いあさるエルサ。
この2人はアメリカ人。

レディ・へスターは「品がない」と、アメリカ人を毛嫌いしています。
その裏で、アメリカのご婦人はじめ、フィレンツェの人たちはへスター率いるイギリス人グループを「サソリ族」と呼んで小ばかにしています。
そんな大人の事情はともかく、ルカはこのご夫人たちから様々なことを教わり、愛情をそそがれながら笑顔を取り戻していきます。

けれども戦時色はどんどん強まっていきます。
ルカの父親は勝手なもので「ジェントルマンの英語を教えてほしい」なんて言っていたくせに、手のひらを返したように「これからの時代はドイツ語だ」と、ルカをオーストリアの寄宿学校に入れてしまいました。

そして、フィレンツェでも外国人に対する暴動が起き始めます。
当然、優雅にイングリッシュティーを楽しむイギリス人たちも、その標的になってしまいます。
けれどもレディ・へスターはムッソリーニを信奉し続け、この事態に対して、ローマまでムッソリーニに直談判しに行きました。
ムッソリーニはイギリス人の身の安全を約束し、紅茶を入れて婦人をもてなしました。

しかしそんな約束はどこへやら。
その後すぐに、ムッソリーニは英仏両国に宣戦布告。
イギリス人の立場は完全に危ういものになってしまいました。
在伊イギリス人たちは次々と国外へ脱出していきます。
けれどもレディ・へスター率いる一行は、信念を曲げず、イタリアに残り続けることにしました。
なにしろレディ・へスターは『ムッソリーニとお茶を』飲んだ仲。証拠の写真も持っているし、危害が加えられるわけはない、と信じていたのです。

ところがついに、彼女たちはトラックに載せられ、サン・ジミニャーノの町へと連行されてしまいます。
イタリア軍の監視下、共同生活を強いられることになったのです。
まさに彼女たちが強制収容所に移送されるという時、すっかり青年に成長したルカがオーストリアからイタリアへ帰国しました。
ルカはサン・ジミニャーノまで足繁く通い、メアリーを精神的に支えます。

そして1941年、日本軍が真珠湾を攻撃したことにより、アメリカが日独伊に宣戦布告。
そのためにジョージーとエルサも、メアリーたちの強制収容所へ連行されてきました。
実は、ユダヤ人だったエルサ。弁護士の助けを借りて出国するはずでした。
けれどもエルサは弁護士に騙されているだけ。そのことに気づいたルカは……。

暗く重たい時代の話なのに、どこまでも明るくからっと描かれています。
なによりも、フィレンツェ、サン・ジミニャーノの景色が美しい!

そしてこの話は、監督ゼッフィレッリの半自伝だそうです。
私生児として生まれたルカが、ゼッフィレッリです。
どこまでが実話に基づいたものなのかはわかりませんが、登場人物の何人かは実在の人物のようです。
サン・ジミニャーノに強制収容所があったことや、スコットランド軍の部隊にこの町が解放されたことも実話なのかもしれません。
まったく知りませんでした。

今もトスカーナの美しさに魅せられ移住してしまうイギリス人やアメリカ人は多いと聞きます。
そうですよね、戦時中にもそういう人たちがたくさんいたのですね。
なにより羨ましいのは、このご婦人方、ウフィッツィのボッティチェリの絵を前に、イングリッシュティーを楽しんだりしちゃうのです。
なんとも贅沢! 戦争が始まる直前まで、こんなに優雅な時間が流れていたとは。

メアリーが手作りの小さな箱で作った舞台を使い、『ロミオとジュリエット』をルカに教えるシーンがあります。
シェイクスピアの英語はイギリス人にとって教科書なんですね。
とても温かいシーンのひとつでしたが、ゼッフィレッリの映画監督としての出世作が『ロミオとジュリエット』と知り納得。
こんなところにも監督の思い入れが見え隠れしています。

女優陣も超豪華メンバー。
今までどうして見たことなかったんだろうな。
イタリア好き、特にトスカーナ好きの方にはお勧めの一本です。
by arinko-s | 2011-12-08 21:43 | 映画 ハリウッド
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