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本日のイタリア語

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Bacio a cinque

連休後半は仕事。楽しみにしていたイタリア映画祭も、あきらめることに。チケット、無駄にしてしまいましたが、仕方ありません。

ここのところ、映画の鑑賞記録が続いていましたが、読書もぼちぼち続けています。
超がつくほど忙しく、ヒーヒーしていた時に、心和ませてもらったのがこの本です。
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著者のGiulia Sagramola(ジュリア・サグラモラ)が、自分の誕生から小学校卒業までのエピソードをイラストで綴った本です。

例えば…
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ジュリアが2歳の頃。
山あいの小さな街で暮らすジュリア。近所のことに色々と関心を持ち始めます。
ある日、山に向かって、「CIAO!(チャオ!)」と声をかけると、「チャオ、アオ」
と返事が返ってきます。てっきり山に住んでいる子どもが返事をしてくれているのだと思ったジュリア。今度は
「COME TI CHIAMI? (ねえ、名前は?)」と訊ねます。
すると「CHIAMI?(きみは?)」と逆に聞かれ。「IO GIULIA (わたしはジュリア)」と答えました。
今度は相手が「GIULIA LIA」と返事するので、「ANCHE TU?(えっ、あなたもジュリアなの?」とジュリアはびっくり。
すると相手が「TU? TU?(君も? 君も?)」と返事。
「BASTA(いいかげんにして)」とジュリアが言うと、相手も「BASTA ASTA ASTA 」
まったくもう! ってジュリア、むっつり。ただのやまびこだったという話。

それから少したって、ジュリアに妹が生まれます。
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病院には両親の祖父母も集合。ジュリアもお父さんに連れられて病院にやってきました。
お母さんに、「ほら、妹のキアラよ」と紹介されます。「小さいでしょ? チャオ、キアラ、っていってごらん」と促され、一応「チャオ、キアラ」と気のりのしない様子で呼びかけてみたものの、「ねえ、ミケーレはどこ?」と不満顔。

実は、ジュリアはお母さんのお腹に赤ちゃんがいると知り、「赤ちゃんの名前は、ミケーレ! 絶対ミケーレ! ミケーレがいい!」と決めていたのです。
ミケーレは男の子の名前。ジュリアは弟が生まれると、信じていたのです。
だから、「キアラよ」なんていわれても、まったく合点がいかない。
おまけに……
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お父さんに「マンマとキアラはもう少し病院にいるけど、その後うちに帰ってくるからね。嬉しいだろ?」と言われ、
「なんで、その子がうちにくるの???」とびっくり。
おじいさん、おばあさんに笑われても、その理由がまったく分からない、というお話。

どこの国も子どもは同じですね。
ホント、楽しい。
ジュリアはどんどん大きくなってお姉さんぶりを発揮しますが、このキアラの下にもうひとり妹のアンナが生まれて、その2人も笑わせてくれます。

タイトルの『Bacio a cinque』は、『5人でチュッ』というところ。
ジュリアの家族は、いつも寝る前に家族で丸くなってキスをし合うのですが、
3人のチュが、4人になり、そして5人になった、というお話です。
# by arinko-s | 2012-05-06 22:27 | 読書 イタリア語

Habemus Papam ローマ法王の休日

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イタリア映画祭初日、特別上映作品の『Habemus Papam』を観てきました。
Habemus Papamというのは、新ローマ法王が決まった時に発せられるラテン語で「新法王が決まりました」という意味だそうです。

物語は、法王のお葬式から始まります。
そして、各国の枢機卿がヴァチカンに集まり、新法王を決めるコンクラーヴェが行われます。
選挙の開票が始まると、枢機卿たちは皆必死でお祈りを捧げ始めます。「どうか、選ばれませんように」と。

その祈りが神に届かず、新法王に選ばれたのは、ダークホースのメルヴィル(Michel Piccoli ミケル・ピコリ)。
ヴァチカン広場には世界中から信者が集まり、新法王の演説を今か今かと待ちつづけていました。
そしていよいよその時が来ると、メルヴィルは重圧に耐えきれず叫び声をあげて、自室へ逃げ込んでしまいます。
結局その日の演説はおあずけ。
ヴァチカン広報官は、メルヴィルの不安を取りのぞこうと、心理療法士ブレッツィを招くのですが、メルヴィルは気をとり直すどころか、ひとりローマの街に逃げてしまい……

心理療法士のブレッツィ役を自ら演じているNanni Moretti (ナンニ・モレッティ)の監督作品です。
公開前から長いこと宣伝を見ていて、見たい、見たいと思っていましたが……
イマイチ期待はずれでした。

もちろんモレッティの作品らしく、笑える場面もたくさんあって、そこそこ楽しめるのですが、
終わり方が「へっ??」って感じでした。
神に生涯を捧げてきた老齢の枢機卿が、そこまで自分に課された立場におののく?
もちろん、ローマ法王というのは、それほど重責なのだということは理解できるのですが。
あんなおじいちゃんが、今さら宗教の道を棄ててどこに行くの? って逆に心配になってしまいました。
どうもリアリティがなさ過ぎます。

ローマの街で一般市民の生活に触れたメルヴィルが「忘れてしまったたくさんのことを思い出さなくては」というようなことを言うのですが、
枢機卿にまで上りつめるような宗教者は、自分の過去を封印して宗教の道を行くのでしょうか?
だとしたら、尚さら逃げ出そうなんて考えにはいたらないように思うのだけれど。
なんだか市民の生活を見て、枢機卿の洗脳が溶けて行くかのような描き方、だと思ってしまいました。

邦題もよくありません。
『ローマの休日』のアン王女のように、法王がローマの休日を楽しんだ後、元の鞘に納まることをイメージしてしまいます。
いや、そういうエンディングだったら、共感度倍増だったんだけどな。
なんだか腑に落ちない気持ちで帰ってきました。
# by arinko-s | 2012-04-29 22:17 | 映画 イタリア

Scialla! (Stai sereno) シャッラ/いいから!

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イタリア映画祭の特別試写会に行ってきました。
ひと足お先に、見た『Scialla! (Stai sereno)』。
最高でした。こんな映画が見たかった、っていう一本。

自宅で個別指導の補習塾を開いているブルーノ。
ある日、生徒のひとり、ルカが実の息子だと知ります。
その上、仕事の事情でイタリアを半年離れることになった母親から、ルカを預かって欲しいと頼まれる。
最初はルカとの距離を保とうとするブルーノでしたが、次第に2人の距離は縮まっていき……

何といっても、ルカ役のFilippo Scicchitano(フィリッポ・シッキターノ)がかわいい!
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いやぁ、こんな息子がいたらたまらん、っていうかんじの少年です(役では15歳)。
イタリア人親子だから、「マンマ、愛してるよ」とか言っちゃって。
日本の15歳は「くそ、うるせえんだよ!」とか言ってるんだろうなあ。表面だけでも「愛してるよ」なんて言ったりしないはず。
日本人の男性からしたら、気持ち悪っ、ってことでしょうが…。
この家族愛の形は、日本の家族の形にはないものですよねぇ。

監督さんのお話では、彼はまったく俳優業に興味がなかったそうですが、この映画がヒットしたこともあって、もう次の作品を撮影中だそうです。
楽しみ!

監督は、Francesco Bruni(フランチェスコ・ブルーニ)。
Paolo Virzi監督作品(とかとかとか)やモンタルバーノ警部シリーズの脚本を手がけてきた人だそうです。
初監督のこの作品はやはり、Virzi 作品のユーモアや温かさを踏襲しているなあ、と感じさせました。
次はどんな作品を撮るのか、これまた楽しみです。

今からイタリア映画祭のチケットを買う方、絶対、絶対お勧めです!

ちなみに原題のScialla! は、ローマっ子たちが使う「ま、落ちついて」とか「やらせてくれよ」という意味の若者言葉だそうです。
# by arinko-s | 2012-04-28 11:20 | 映画 イタリア

VINCEREの続き

先日観た『VINCERE』について、ひとつ書き忘れました。

VINCEREという単語は、日伊辞典を引くと「勝利する、優れている、(賞金などを)もらう、克服する」となっています。
なぜ、この映画のタイトルが『VINCERE』なのか、ずっと引っかかっていました。

イーダが勝利したかというと、まったくそうではありません。
精神病院に閉じこめられて、ムッソリーニの妻は自分だという主張は認められなかったのですから。

もちろんムッソリーニも、勝利していません。
戦争に負けた上に、自国民に吊るし上げられるという敗北。

邦題は『愛に勝利を』として「ムッソリーニを愛した女」という副題をつけています。
でも、このタイトルも考えれば考えるほど、良くわからなくなってきます。
これだと勝利を求めたのは、イーダだけのように思えます。
そもそも愛に勝利があるのか、って気もするし……。

それに勝利したくて、突き進んだのはムッソリーニのほうじゃないかなあ、と思うのです。
どうしても VINCERE という単語はムッソリーニへの言葉のような気がしてしまう。
「勝つために」は、人を傷つけることも厭わなかった、という意味なのかな、と思ったりしました。

そこで、伊伊事典。
すると、vincereには、ものすごくたくさんの同意語があることがわかりました。
ほれさせる、追い払う、孤立させる、引き離す、踏みにじる、監視する、侮辱する、殺す……と。

これってつまり、ムッソリーニがイーダにしたことすべてです。
やっぱりこのタイトルは、ムッソリーニに向けたもの、だと確信。
# by arinko-s | 2012-04-26 17:26 | 映画 イタリア

VINCERE 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

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夜よ、こんにちは』のマルコ・ヴェロッキオ監督の、2009年の作品です。

ムッソリーニ(Filippo Timi フィリッポ・ティーミ)が、まだ社会主義の活動家だったころ、警察に追われる彼を救ったイーダ(Giovanna Mezzogiorno ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)。
2人は恋に落ち、イーダはムッソリーニを支援するために私財をなげうちます。
そして2人の間には、息子ベニート・アルビーノが生まれました。

しかし、次第に政治の中心的存在となり、権力を手にしていったムッソリーニは、イーダを遠ざけるようになります。
別の女性ラケーレ・グイディと正式に結婚し、イーダの存在を否定するようになるのです。
それでもイーダは執拗に、ムッソリーニに近づこうと様々な場所に追いかけていきます。
そんなイーダをムッソリーニは、イーダの故郷に軟禁しました。
けれども、それだけでは自分の思惑通りにはいかないとわかり、今度は彼女を精神病院に幽閉してしまいます。
そして、母親と引き離された息子の方は、ファシスト党員の養子にされ、寄宿学校へと入れられてしまいました……。

という、イーダという女性を軸に、実話を元に描いた映画です。
このイーダという女性の存在については、2005年、イタリア人とアメリカ人ハーフの2人のジャーナリストが取材・作成した『ムッソリーニの秘密』というドキュメンタリーで、明らかになったそうです。

結局、イーダは精神病院から出してもらえることはなく、1937年に亡くなってしまったそうですが、第二次世界大戦が始まる前に亡くなったことがせめてもの救いかもしれません。
わたしには、どうしてそこまで彼女がムッソリーニに執着したのか理解できませんが、それほど愛していたのであれば、ムッソリーニが処刑されたことを知ったら本当に気が狂ってしまっていたかもしれません。
しかもその時、あれほど嫉妬を覚えた妻ではなく、また別の愛人が一緒だったと知ったら!

何より気の毒なのは、息子のベニート・アルビーノです。
常にファシスト政府の監視下に置かれ、友人たちからは「ムッソリーニの真似をしてみろ」とからかわれ、最期は彼も精神病院に入れられて27歳の若さで亡くなってしまうのです。

イーダの父親は村長をしていた、土地の名士だそうです。
イーダ自身はパリの学校で美容医学を学び、ミラノでエステサロンまで開いた女性。
それほどインテリで、商才にも長けていた女性が、なぜムッソリーニの狂気を見抜けなかったのか。
追えば追うほど逃げいてくムッソリーニ。華やかな舞台を歩き始めたムッソリーニが、イーダにはより輝かしく見えたのかもしれませんね。
さっさと過去の男には見切りを付けて、新しい道を歩んでいけば良かったのに〜〜、と思わずにはいられませんでした。
いや、でもひょっとしたらムッソリーニに未練があったのではなく、ひとこと自分の存在を認めさせたいだけの意地だったのかもしれません。

何より印象的だったのは、イーダ役のジョヴァンナ・メッツォジョルノ。
L'ultimo bacio』や『LEZIONE DI VOLO』でお馴染みの女優さんですが、今までのかわいらしいイメージを脱ぎ捨て、この役に体当たりしている感じです。
彼女のヒステリックに怒る演技はもう何度も目にしているけれど、その上を行く迫力。
執念が、全身からめらめら湧き出ていました。
こんなにかわいい女優さんなのに、ヌード姿も老け顔も惜しみなく披露。ますますファンになってしまいました。

もうひとりの主役、ムッソリーニ役のフィリッポ・ティーミは、今乗りに乗っている役者さん。
俳優だけでなく、監督もするし、作家としても活躍しているそうです。
この役の評価もとても高かったようですが、ただひとつ、わたしの知っているムッソリーニよりも数倍男前で、ムッソリーニと結びつけるのが難しかったです。
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# by arinko-s | 2012-04-23 18:17 | 映画 イタリア