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Non ti Muovere

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先日見た『La belleza del somaro』のSergio Castellitto(セルジョ・カステッリット)監督の映画『Non ti Muovere(動かないでくれ)』(邦題:赤いアモーレ)を見ました。

カステッリット扮する外科医ティモーテオの勤務する病院に、ある日バイクで事故を起こした娘が運ばれてきます。
頭部に損傷を負った娘の大手術を廊下で待つ間、ティモーテオはかつて愛した女性の幻影を見ます。
そして、彼は過去を回想しはじめました。

その女性の名はイタリア(ペネロペ・クルス)。
車が故障し困っていたティモーテオをイタリアが助けてあげたことがきっかけで、二人は衝動的に恋に落ちます。

ティモーテオはジャーナリストの妻を持ち、海辺の瀟洒な家に住み、端から見れば満ち足りた生活を送っています。
けれどもイタリアへの想いは募るばかり。関係を絶つことができません。
そんなある日、イタリアの妊娠が発覚。ティモーテオは、妻と別れる決心をします。

ところが、すべてを妻に告げようとしたその日、逆に妻から妻の妊娠を告白されます。
何も言えなくなってしまったティモーテオ。イタリアにも連絡することができなくなってしまいます。

結局、イタリアはジプシーの女に頼み、子どもを堕胎。
妻は無事に女の子を出産します。
けれども、ティモーテオはイタリアを忘れられずに、故郷へ帰るイタリアについていってしまいます。

このまま二人の生活を始めようとティモーテオが決心したその夜、イタリアは突然の腹部の激痛に襲われます。
ティモーテオは彼女を救急病院に運び込み、自分の手で開腹手術を行う。
けれどもイタリアは帰らぬ人となってしまうのです。劣悪な堕胎手術が引きおこした死でした。

ストーリーは、身勝手な男の物語ともとれます。
何しろ娘が生死をさまよっているところで、自分が心から愛したと思っている女性を思いだしているのです。
イタリアに娘を助けてほしい、と祈ったのかもしれないし、娘に「こんな父を許してくれ」と懺悔しているとも取れなくはないけれど……。

ティモーテオの身勝手さを考えれば、腹だたしいストーリーなんですが、でも最後までくぎ付けでした。
ペネロペ・クルスがすごいんです。
今までいくつもペネロペ・クルスの映画を見てきましたが、こんなに美しくないべネロペ・クルスは初めて。
貧しいイタリアは、なにひとつ不自由の無い暮らしをしているティモーテオの妻とは比べ物にならないくらいに、化粧も服装も品がありません。
だけどそこはペネロペ・クルス! どのペネロペ・クルスの映画よりも、ペネロペ・クルスが輝いていたかもしれません。

それにしても、こんなに身勝手な男を愛して、ひたすら耐えて、しかも命まで落としてしまうなんて。
悲しすぎます。不憫すぎる。
どうして、こんな男に恋しちゃったんでしょう。

タイトルになっている「Non ti muovere」という台詞は(聞き逃していなければ)3回出てきました。
手術中の娘の血圧が低下したとき、手術室に入り娘に心臓マッサージをしたティモーテオの台詞。
「そこから動くんじゃない」つまり「逝くんじゃない」と言っているんですね。
2つめは、家を出て田舎に帰ると決意したイタリアにティモーテオが言います。
「行かないでくれ」ってことですね。
そして3つめは、手術室から出てきた看護士に、やはりティモーテオが言った台詞。
この場合は手術の状況を伝えようとした看護士に「そこから動かないで」。
何かを伝えられるのを恐れたんですね。
『動かないで』っていうふうに一様に訳せないから『赤いアモーレ』って邦題にしたのかな?
でも、それも良くわからないタイトルだと思うけど。

それよりなにより、ティモーテオの台詞に
Chi ti ama
c'e' sempre prima di te
prima di conoscerti
というのがありました。
「自分を愛してくれる人は いつも目の前にいる 知り合うより前から」

この最後の部分の訳が「たとえ気づかなくても」となっていました。
運命論的な意味あいが消えてしまって、すっごく残念な訳って気がしました。
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by arinko-s | 2011-05-15 22:10 | 映画 イタリア

La bellezza del somaro ロバの美

今年もイタリア映画祭が始まっています。
わたしも昨日2本見てきました。そのうち一本がこの『La bellezza del somaro ロバの美』です。
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人気建築家マルチェッロと心理学者マリーナの夫妻には、17歳のひとり娘ローザがいます。
夫妻は、毎年ハロウィーンの季節に、トスカーナの田舎にある別荘に友人知人を招いて過ごすことにしているのですが、その年ローザは2人に「彼氏を連れて行きたい」と告げます。
いったいどんな子を連れてくるのだろうと、2人はドキドキハラハラ。
そこへ現れたのは、70にもなろうかという老人!
ふたりは茫然。それがいら立ちに変わり、怒りになり、そのはけ口としてお互いの不満が爆発し…

というコメディー映画です。
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監督は、父親も演じているSergio Castellitto セルジョ・カステッリット。
ジュゼッペ・トルナトーレの『L'uomo delle stelle 明日を夢見て』('95)で観たことのある方も多いかも。
調べてみたら、ナルニア国物語第2章『カスピアン王子のつのぶえ』にも出ているそうです! 全然、気づいていませんでした。
Caterina va in citta' 』でも、ちょっとうっとうしい父親役を好演していました。

この人の監督作品ということで、興味津々。
根底にあるテーマは、イタリアの格差社会(とりわけ自分の地位を気にする中年男性)や思春期の子どもたちを取り巻く環境、家族の絆、その裏に潜むもろさ。『Caterina va in citta'』と通じるものを感じました。
それを笑いで皮肉るところは、さすがイタリア。からっと笑い飛ばしてしまうセンスは、やっぱりイタリア的だなあ、と思いました。
登場人物は、誰もみな個性的で、そこもイタリアらしい。
でも実際には、これほど個性的な人たちにはそうそう出会わいません。

もうひとつ特筆すべきは、脚本を担当しているMargaret Mazzantini マーガレット・マッツァンティー二のこと。
イタリアで大人気のベストセラー作家なのですが、監督カステッリットの奥さんだということを初めて知りました!
買ったまま本棚に眠っていた本を先日取りだし、ぺらぺらめくっていたところ。
あまりに分厚くて重たいので、なかなか手が伸びずにいました。
いつになるかまだ順番待ちの状態ですが、必ず読まなくては。
2人の共作『Non ti muovere』('04)は、マッツァンティーニがストレーガ賞(イタリア文学の権威ある賞)を受賞した同名小説が題材。まだ観ていないので、さっそく観てみたいと思います。

ところでタイトル『ロバの美』とは、なんだろうなあ、ってずっと映画を観ながら考えていました。
映画の中、ロバはいたるところで登場するのですが、確かにトスカーナの雄大な風景の中、静かに佇むその姿は美しい。
でもカステッリットとマッツァンティーニの言おうとしているところは、なんなんだろう?
周りがどたばた大騒ぎをしていても、悠然と構えいっさい動じないところ?
その姿が、おろおろしたりヒステリックになったりする人間と対比されていて笑いを誘うのですが、実はイタリアではロバはマヌケな人の代名詞だったりもします。
普段はマヌケと思われているロバだけれど、実はずっと人間の方が情けないぞ! ってことかしら?
そうかもしれませんねぇ。
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by arinko-s | 2011-05-03 12:27 | 映画 イタリア