昨年イタリアを代表する顔としても選ばれた、今最もイタリアで影響力を持つジャーナリスト、ロベルト・サヴィアーノ(Roberto Saviano)。
(写真は
こちらからコピーしています)
日本でも、ナポリを本拠とするマフィア組織「カモーラ」の実体を暴いたノンフィクション『死都ゴモラ』が邦訳されています。
この本のおかげで、カモーラから殺人予告を受けたサヴィアーノ。今も護衛付きの不便な生活を強いられているそうです。
そのサヴィアーノが、『La Repubblica』のネット版で、「自分はこれがあるから生きているんだ、というもの10個を挙げてほしい」と呼びかけています。
それはとても個人的なことだし、他人から見たら些細なことに違いありません。
でも自分のことをみんなで語りあえば、今のイタリアが見えてくるはず、という試みだそうです。
まず、サヴィアーノ自身の10のリスト。
1)健全な水牛のモッツァレッラチーズ(昨年6月、青いモッツァレッラが発見されるという騒動を受けてのことだと思われます)
2)『Spartacus, Love Theme』を演奏するビル・エヴァンス→
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3)愛する人とラファエロ・サンツィオ(サンティ)の墓(ローマ、パンテオン内)に行き、多くの人には知られていないラテン語の碑銘を読むこと
(直訳ですが:生前、自分を超える存在だと母なる自然から畏れられた、かのラファエロはここに眠る。彼が亡くなると、母なる自然は、彼と共に死んでしまうことを畏れた)
4)86年、ワールドカップメキシコ大会、アルゼンチン対イギリスの試合でマラドーナが決めた2−0のゴール
5)『イリアス』(ギリシャの叙事詩)
6)散歩しながらヘッドホンで聞く、ボブ・マリーの『レデンプション・ソング』→
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7)海の底の底までもぐること
8)不自由な生活を強いられるなか、自宅に戻る日を夢みること
9)夏の午後のセックス。南で
10)自分を批判する署名が集められた日に、パソコンをつけたら兄からのメールが届いていて「おまえを誇りに思う」と書かれていたこと
ほんとうに、とっても個人的。
これを書き出すことによって、その人の成り立ちが見えてきそうです。
このサヴィアーノの呼びかけに対し、次々と読者のリストが寄せられています。
例えばこんなの。
1)朝一番のコーヒー
2)本のページの香り
3)ルーカとマッテオ(赤ちゃん)の泣き声
4)死期が迫っている父の笑み
5)髪をゆらすそよ風
6)夜、夫に抱きしめてもらうこと
7)選択の自由
8)冬の海
9)赤ちゃんをあやすこと
10)わたしを愛してくれる人たちに返すべき、そして返したい愛
双子の赤ちゃんのいる海辺に住むお母さんかなあ?
この人と同じように、みんなまず子どもや家族のことを書いていますね。
うんうん、家族はなによりの活力に違いありません。
それから、食べ物のこと。
日曜日のラザーニャとか、シチリアのパレルモで食べるカンノーニ(お菓子)とか、海辺のレストランで食べるボンゴレとか。
きっと特別な食事なんだろうなあ。
わたしだったら「みんなで囲む鍋」かなあ。
いやあ、「息子が大盛り2杯食べてくれるカレーライスとミートソーススパゲッティ」かなあ。
それとも「熱々のコロッケ」かもしれません。
海のことを書いている人も多い。
さすが海好きのイタリア人です。
わたしも「イタリアのチンクエジョルナーテの海辺で見あげた星空」を入れようかなあ。
それからサッカーのことを書いている人も多数。さすがカルチョ(サッカー)の国、イタリア!
ずばり「インテル(長友の移籍したチーム)」!」なんて回答もありました。
こればかりは日本人とは決定的に違う、と思うのが、セックスについて書いている人の多いこと!
日本人だったら、匿名とはいえ、なかなか10のリストに入れない気がします。
わたしもこっそりリスト化してみました。
こうして、普段意識していないことをあえて文字にしてみると、確かに「ああ、このためにわたしはがんばれる」って思えてきます。