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本日のイタリア語

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I soliti ignoti いつもの見知らぬ男たち

昨年亡くなったマリオ・モニチェッリ監督の追悼・作品上映会に行ってきました。
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1958年の作品。ヴィットリオ・ガスマン、マルチェッロ・マストロヤンニ、トト(イタリアの喜劇スター)など、そうそうたる出演者の顔ぶれです。

ペッペ(ヴィットリオ・ガスマン)、マリオ、コジモ、カパンネッレ、フェッリボッテ(鉄樽の意)、ティベリオ(マルチェッロ・マストロヤンニ)の5人は、簡単にお金を稼ぐための方法をあれこれ試行錯誤する日々。
つまり泥棒です。
ある時、刑務所から出てきたばかりのペッペは、ひとつの計画を思いつきました。
まずあるアパートの共有炭置き場(通りに面して金網の扉がある)を通ってそのアパートの中庭に入り、壁をよじ登って空き部屋の窓へ。
その空き部屋に窓から侵入したら、壁を壊して隣の質屋にもぐり込み、金庫を奪うというものでした。

ペッペたちはまず、泥棒の師匠ダンテ・クルチャーニ(トト)に指南を仰ぐことにしました。
クルチャーニは、今や本業ではなく「その方法」を教えて稼いでる元泥棒です。
クルチャーニの教え通りアパートに忍びこみ、どうにか壁を壊すことに成功した彼ら。ところが……

というあらすじです。
モニチェッリは喜劇映画の巨匠です。
もう笑いどころ満載。もちろん最後の、壁をやっとのこと崩したシーンは一番の大爆笑でした。
想像通り泥棒は失敗に終わるのですが、その後とっとと逃げもせずに、台所に作り置きしてあった「パスタと豆」をみんなで食べてくつろいじゃったりして。
まったく緊張感のない泥棒たちというのが、なんともイタリア的です。
I soliti ignoti  いつもの見知らぬ男たち_b0171200_19445072.jpg


イタリア国内はもちろんのこと、アメリカでも大成功したこの映画は、ハリウッドでリメークされているそうです。それも何度も。
1984年にはション・ペーンが主演した『クラッカーズ』。
2000年のウッディ・アレンの『おいしい生活(Small Time Crooks)』も、一部この映画にインスパイアされているそうです。
2002年にはジョージ・クルーニーらが演じた『ウエルカム・トゥ・コリンウッド』が撮られています。

それほどまでにハリウッドにも影響を与えたモニチェッリ。
今観ても、笑いのツボは全く色あせておらず、日本で紹介されてこなかったのが不思議なくらいです。

実は映画上映の前に、塩野七生さんの「モニッチェッリの喜劇」についての講演会がありました。
映画に負けず劣らず、この講演会を楽しみに足を運んだのですが……
何せ「えっと」「あれっ」「なんだったかしら」が多く、正直何が言いたいのか良くわかりませんでした。
「えっと、えっと」のあと間を置いて、違う話にいってしまう!

でもその中でわかったことは
モニチェッリはイタリア人を笑い飛ばし続けた」ということ。
そして、彼の映画はどれも大ヒットしている。つまりイタリア人は自分たちを笑い飛ばすことを厭わない。
自分自身を笑い飛ばすことは、とても勇気のいること。
自分だけが正しいと思わないバランス感覚に優れている。それは自己批判能力に優れているということでもあるということ。

確かに、確かに、と頷いちゃいました。
「イタリア人てまったく!」とステレオタイプにバカにされるところを、あえて映像にしてしまったモニチェッリ。
それを観てむっとするどころか、「あはは! そうそうイタリア人てこうだよね、まったく」って笑ってしまうイタリア人たち。
素晴しい! 
自分のダメなところを笑い飛ばせるようになることって、人生を楽しむひとつの秘訣かも知れません。

それにしても、こんな講演会でも原稿作って来ないんだなあ、塩野さんは。ってそっちの方に感心することしきりの夜でした。
by arinko-s | 2011-11-20 19:50 | 映画 イタリア
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